従来の寄与分の請求における「特別の寄与」と、特別寄与料における「特別の寄与」とはどのような違いがありますか。

 従来の寄与分の請求における「特別の寄与」は、寄与の程度が被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度の貢献(「通常の寄与」)を超える「高度な」ものであることが要求されます。
 一方、特別寄与料における「特別の寄与」は、貢献の程度が一定程度を超えることで足ります。
また、従来の寄与分の請求では、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたことが必要です。
これに対し、特別寄与料を請求するためには、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたことが必要です。
 このように、従来の寄与分の「特別の寄与」では「財産上の給付」も要件とされているのに対し、特別寄与料における「特別の寄与」では「財産上の給付」は要件とされていないことに注意が必要です。

自筆証書遺言にパソコンで作成した目録を添付したいのですが、遺言書本文と目録には契印をする必要がありますか

 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、印を押さなければなりません。また、自筆証書遺言と一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録は自書でなくてもかまいませんが、自書でない場合、遺言者は、その目録の毎頁に署名し、印を押さなければなりません。

 しかし、遺言書本文と目録との間には契印をすべきとする規定はありません。さらに言えば、遺言書本文に押捺される印と目録に押捺される印は、必ずしも同じ印鑑でなくてもかまいません(あえて別々の印鑑を押捺することを推奨しているわけではありません)。

私の妻が亡父の療養看護に尽くし、父の財産を守ることができました。妻は父の相続人ではありませんが、妻の寄与に対して報いることはできないのでしょうか。

 相続人が被相続人の財産形成等に寄与した場合は、「寄与分」として遺産分割手続における具体的相続分を定める際に考慮されることとなりますが、相続人ではない者(本件で言えば相続人の妻)が相続人の療養看護に尽くした場合には、その者を「相続人の補助者」と捉えて「寄与分」を考慮するなどの工夫がされていました。

 平成30年相続法改正により特別寄与料の制度が新設されましたが、「相続人の補助者」にあたるとされる者が被相続人の親族であり、特別寄与料の請求権者に該当する場合に、「相続人の補助者」として立場と特別寄与者としての立場を選択することができるのか、特別寄与者制度の創設により「相続人の補助者」との考え方は採ることができなくなったのか、現段階では明らかではなく、実務の推移を注視する必要があります。

 仮に、選択的に「相続人の補助者」構成をとることができるのであれば、遺産分割手続において相続人の寄与分として考慮するのか、特別寄与料を請求するのかのいずれかを選択することになります。

 一方、「相続人の補助者」構成をとることができないのであれば、特別寄与者は遺産分割の手続とは別に、特別寄与料の請求をする必要があります。

自筆証書遺言にパソコンで作成した目録を添付したいのですが、目録は表裏印刷でもいいですか

 自筆証書遺言と一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書でなくてもかまいませんし、表裏印刷でもかまいません。ただし、偽造や変造防止の観点から、自書ではない目録を添付する場合には、遺言者は、その目録の毎頁に署名し、印を押さなければなりませんので、目録が表裏印刷されている場合はその両面に署名押印をする必要があります。

 たとえば、表面だけに目録が記載され、その面に署名押印がなされているケースを想定すると、後日、その裏面に別の財産目録を記載することができてしまいます。こうした変造を防止するために、自書によらない記載が両面にある場合はその両面に署名押印を求めているのです。

相続人以外の者が被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした場合、どのような者でも特別寄与者として特別寄与料を請求できるのですか。

特別寄与者は被相続人の相続人ではない親族に限られます。

親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいますが、このうち相続人ではない者が被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした場合には、特別寄与者として特別寄与料を請求することができます。

 ただし、親族であっても、相続の放棄をした者、相続人の欠格事由に該当する者、廃除された者は特別寄与者となることはできません。これは、相続人になることができたのに自ら相続放棄をした者や、相続人になることができなかった者まで特別寄与者として救済する必要性は乏しいと考えられるからです。

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4月8日発刊予定! 相続実務必携 静岡県司法書士会あかし運営委員会 編

あかし運営委員会の各委員が渾身の力を込めて執筆! 相続業務関係者の必読書!
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本書の内容

第1章 「相続登記の専門家」から「相続の専門家」へ
第2章 遺産承継業務・静岡モデル
第3章 遺産承継業務・静岡モデルに関するFAQ〔49設問〕
第4章 相続業務相談時の説明と相談のあり方
第5章 918条財産管理人の理論と実践
第6章 共有不動産の処分に関する条項案
第7章 法定相続情報証明制度の基礎知識
第8章 法定相続情報証明制度に関するFAQ〔64設問〕
第9章 相続全般に関する必須知識FAQ〔97設問〕

遺言の文書が短いので一頁の自筆証書遺言に財産目録を入れることはできますか

 自筆証書遺言は、その全文、日付及び氏名を自書し、印を押さなければなりませんが、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書でなくてもかまいません。

 お尋ねのケースは、遺言の文書が短いので一枚の紙に財産目録を入れてしまいたいという趣旨であると思われますが、一枚の紙に入れるのであれば財産目録も自書する必要があります。目録が自書でなくてもいいのは、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合に限られます。

私はAの相続人ではありませんが親族であり、Aの生前にAの療養看護に尽くし、Aの財産維持に特別の寄与をしたと思っています。そこで、相続に際し金銭の請求をしたいと考えていますが、何か方法はありますか。

平成30年相続法改正により、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができるようになりました。この「特別の寄与をした被相続人の親族」のことを「特別寄与者」といい、「寄与に応じた額の金銭」のことを「特別寄与料」といいます。

相続人が被相続人の財産形成等に寄与した場合は、「寄与分」として遺産分割手続における具体的相続分を定める際に考慮されることとなりますが、特別寄与者による特別寄与料の支払請求は遺産分割の中で考慮するのではなく、相続とは別の枠組みで特別寄与者が相続人に対して特別寄与料の支払を請求することになります。そして、その協議や調停が整わない場合には、最終的には家庭裁判所の審判により定められることとなります。

自筆証書遺言の作成方法を教えて下さい

 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、印を押さなければなりません。ただし、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については自書でなくてもよく、パソコンで作成したり、遺言者以外の者が代筆したりしてもかまいません。また、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳のコピー等でも結構です。

 ただし、自書ではない目録を添付する場合には、遺言者は、その目録の毎頁に署名し、印を押さなければなりません。

「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が「市民と法」に掲載されました。

「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が「市民と法」に掲載されました。

 「市民と法」という法律雑誌(民事法研究会)がありますが、このたび、古橋清二の論考「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が掲載されました。

 おそらく、今後、民法918条2項にもとづく相続財産管理人を活用する場面が増えると思いますので、興味のある方はご一読ください。

 はしがきだけ掲載しますので、あとは、「市民と法」をご覧ください。

1.本稿の目的

 本誌108号から始まった「遺産承継業務・静岡モデル」の短期集中連載では静岡県司法書士会あかし運営委員会[1]の研究成果を紹介しているが、静岡モデルの根底には、司法書士が行う遺産承継業務は一般受託業務[2]であって、司法書士法施行規則31条(以下、「規則31条」という。)の「他人の財産の管理若しくは処分を行う業務」には該当しないとの考え方が流れている。そして、そのような立場では司法書士は遺産分割に実質的に関わることはできないと考えている。

一方で、相続においては、何らかの事情で相続人の一部または全部が相続に関わろうとせず、またはそれが期待できないために、相続財産が散逸したり、相続人、第三者又は利害関係人の利益が損なわれる事態が生じる場合があるが、このような場合、司法書士が他人の財産の管理若しくは処分を行う業務を行うことが許容される地位に就くことができれば、相続財産の管理処分を適切に行い、又は、円滑に相続人に財産を引き継ぐ役割を担うことが可能となる(規則31条1号)。

前号では、上記のような場面において、民法918条2項の規定にもとづいて選任される相続財産管理人(以下、「918条財産管理人」という。)の活用と権能等について理論面からの考察を行った。

本号では、筆者が918条財産管理人に選任された四つの例について紹介するものであるが、いずれも利害関係人が保管を余儀なくされている相続財産を相続人に引き渡すことを目的として申し立てられたものである。このうち2例は筆者自身が申立書の作成を受任したものであり、内1例は筆者自身が申立人となった事例である。

[1] 静岡県司法書士会では、平成28年7月の法定相続情報証明に関する報道から間もなく、新制度の稼働を契機に相続手続きの初期段階から司法書士が関与することにより「『相続登記の専門家』から『相続の専門家』へ」を合言葉に掲げる研究団体を発足し、これを母体として平成29年度より「あかし運営委員会」が新設されている。「あかし」の由来は、法定相続情報証明の「証」より。なお、同委員会の活動記録はウェブサイト(http://akashi.wp-x.jp/)を参照されたい。

[2] 「一般受託業務」とは、附帯業務のうち司法書士法施行規則31条で規定されていない業務という趣旨である。詳しくは、拙稿本誌108号「遺産承継業務は規則31条業務なのか~とりわけ遺産分割への関わり方に対する問題提起~」参照