父が亡くなって調べたところプラス財産より負債の方が多いため相続放棄をしようと考えていますが、私は、昨年、父から生前贈与を受けて相続時精算課税を選択していますので、それでも相続放棄ができるのか心配です。

父が亡くなって調べたところプラス財産より負債の方が多いため相続放棄をしようと考えていますが、私は、昨年、父から生前贈与を受けて相続時精算課税を選択していますので、それでも相続放棄ができるのか心配です。

生前贈与を受けていても相続財産の処分(法定単純承認)ではありませんので、相続放棄をすることは可能です。但し、税法上、相続時精算課税を選択して生前贈与を受けた財産は、相続によって取得したものとして相続税の計算がされることになりますので注意が必要です。

 なお、被相続人が債務超過であることを知りながら相続で債務を引き継ぐことを避ける意図で生前贈与を行っていたような場合でも、相続放棄は詐害行為取消しの対象となりません(最判昭和49年9月20日)ので相続放棄が取り消されることはないと考えられますが、このような場合には生前贈与自体が詐害行為として取り消される可能性はあります。

公益目的の法人に寄付をする遺言書を作成しましたが、やはり寄付を止めて子供に全財産を残したいと考えております。この場合、どうすればいいのでしょうか

公益目的の法人に寄付をする遺言書を作成しましたが、やはり寄付を止めて子供に全財産を残したいと考えております。この場合、どうすればいいのでしょうか

 民法では、前の遺言と後の遺言が抵触するとき又は、遺言を遺言後の生前処分その他の法律行為が抵触するときは、その抵触するする部分について、遺言の撤回があったものと擬制(みなされます)しています(民法1023条)。

 遺言は、遺言者の最終意思を尊重するものですから、この場合、新たに子供に財産を相続させる旨の遺言書を作成すれば、後の遺言として優先されます。

 また、財産を子供に生前贈与した場合も、遺言と抵触する法律行為として、遺言は撤回されたものと擬制されます。

夫が亡くなりました。相続財産は預金約500万円だけです。相続人は私と30才の子供だけです。銀行に預金を解約しに行ったところ、遺産分割協議書の提出を求められました。子供は「かあさんが相続すればいいよ」と言ってくれていますので遺産分割協議書という書類は作っていません。子供は転勤で海外にいるのですが、どうしたらいいでしょうか。

夫が亡くなりました。相続財産は預金約500万円だけです。相続人は私と30才の子供だけです。銀行に預金を解約しに行ったところ、遺産分割協議書の提出を求められました。子供は「かあさんが相続すればいいよ」と言ってくれていますので遺産分割協議書という書類は作っていません。子供は転勤で海外にいるのですが、どうしたらいいでしょうか。

 亡くなられたご主人の預金は相続人全員の同意がなければ解約できないことになっています。銀行としては、子供さんが「かあさんが相続すればいいよ」と言っていることを書面で確認する必要があるわけです。
 そのため遺産分割協議書の提出を求められていると思われますが、遺産分割協議書には相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付しなければなりません。

 子供さんが住所を海外に移されている場合は印鑑証明書が発行されませんので、代わりに居住先の日本大使館または領事館で「署名証明書」(サイン証明)を発行してもらいます。

 具体的には、遺産分割協議書を海外の子供さんに送り、大使館または領事館へお持ちいただいて領事の面前で署名し、証明書を付けてもらいます。遺産分割協議書の作成はご自身でもできますが、不安があるようでしたら専門家に相談されるとよいでしょう。

(文責 井口ゆり)

公益目的で財産の寄付を考えていますが、財産に不動産があります。注意することはありますか

公益目的で財産の寄付を考えていますが、財産に不動産があります。注意することはありますか

 個人が、土地・建物など不動産を法人に寄附した場合、その不動産は寄附時の時価で譲渡があったものとみなされ、取得時から寄附時までの値上がり益に対して譲渡人に譲渡所得税(みなし譲渡所得税)が課税されます(所得税法第59条第1項第1号)。

 しかし、公益法人等(非課税制度の対象となる公益法人等とは、公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人(法人税法に掲げる一定の要件を満たす法人)及びその他の公益を目的して事業を行う法人(社会福祉法人、学校法人、更生保護法人、宗教法人、特定非営利活動法人など))に寄附した場合において、一定の条件(その寄附が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することなど)を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、みなし譲渡所得税が非課税とする制度が設けられています(租税特別措置法第40条)。

 国税庁長官の承認を受けるためには、以下のすべての要件を満たす寄附でなければなりません。

・寄附が教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること。
・寄附財産が、その寄附日から2年以内に寄附を受けた法人の公益を目的とする事業の用に直接供されること。
・寄附により寄附した人の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄附した人の親族その他これらの人と特別の関係がある人の相続税や贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないこと。

 非課税承認後であっても、承認要件に該当しなくなった場合には、国税庁長官は、いつでもその承認を取り消すことができることとされています。

 この国税庁長官の承認を受けようとする人は、「租税特別措置法第40条の規定による承認申請書」を、寄附日から4か月以内に寄附した人の所得税の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 より詳細を知りたい方は国税庁HPを参照してください。

公益目的で財産を寄付したいのですが、遺言書はどのように作成したらいいのでしょうか

公益目的で財産を寄付したいのですが、遺言書はどのように作成したらいいのでしょうか

 公益目的をもった活動をしている個人や団体への寄付(法律用語では遺贈)をすることは可能ですが、以下に注意点を挙げておきます。

①できるだけ公正証書遺言で作成しましょう

 遺言には、主に全文を自筆する自筆証書遺言と公証人に作成してもらう公正証書遺言があります。自筆証書遺言は遺言者だけで作成することができ費用がかからないというメリットがありますが、民法に定める方式を逸脱すると無効になってしまう場合もあります。また、自分だけで作成したために遺言の保管場所が分からず、せっかく作成した遺言が実行されないという事態もあり得ます。さらに、遺言者が死亡した後、家庭裁判所で検認という手続を行う必要があります。

 一方、公正証書遺言は、専門家である公証人が作成しますから遺言が無効になってしまうことはほとんど考えられませんし、検認手続をすることなく遺言を執行できます。公証人に対する報酬は必要となりますが、遺言は公正証書で作成することをお勧めします。

②相続人でない遺言執行者を指定しましょう

 公正証書遺言であれば、通常は公証人から遺言執行者を指定するように勧められますが、自筆証書遺言の場合、遺言執行者が指定されていないことがよくあります。遺言執行者とは、遺言の内容を実現する責務を負った人のことです。自分の最後の意思を確実に実行するために、信頼できる人を遺言執行者に指定しておきましょう。

 特に、遺言が公益目的の団体等に財産を寄付する内容となっている場合は、遺言の実行は相続人にとって相続財産の減少に繋がりますから、相続人任せにしておくとスムーズに遺言が実行されない場合があります。

 以上のような理由から、相続人でない者、できれば法律に詳しい専門家を遺言執行者に指定しておくことをお勧めします。

③相手を特定しましょう

 過去の判例によると、「遺産の全部を公共に寄付する」という内容の遺言が認められたケースがあるようです。その場合、遺言執行者が遺言者の意思を慮って寄付先を決めることになります。しかし、一般には、相手先を定めて指定しておくべきです。

 団体であれば、法務局で登記事項証明書を取り寄せ、所在地、代表者、団体の目的などを確認しましょう。個人であれば、住所氏名生年月日を確認できる資料を取り寄せることができれば取り寄せ、遺言に正確に記載するようにしましょう。

④寄付する相手がどのような財産なら受け入れるのか事前に調査しましょう

 公益目的の個人や団体の中には、換価処分が困難な不動産の寄付は受け付けないところもあります。事前に、その団体がどのような財産なら寄付を受け付けるか、確認しておきましょう。不動産の寄付を受け付けず換価処分をして現金として寄付する必要があるのなら、遺言の中で遺言執行者に換価処分の権限を与えておく必要があります。

私は幼いときに両親が離婚し、母の元で暮らしました。父とは長年音信不通でしたが、先月、父の再婚相手から手紙で連絡があり、父が亡くなったことを知りました。また、父には多額の借金があり、父の再婚相手とその間の子は既に相続放棄の手続きをとったとのことでした。しかし、実際本当に多額の借金があり、本当に相続放棄の手続きをとったのか不明です。この点について、何か調べる方法はないでしょうか。

私は幼いときに両親が離婚し、母の元で暮らしました。父とは長年音信不通でしたが、先月、父の再婚相手から手紙で連絡があり、父が亡くなったことを知りました。また、父には多額の借金があり、父の再婚相手とその間の子は既に相続放棄の手続きをとったとのことでした。しかし、実際本当に多額の借金があり、本当に相続放棄の手続きをとったのか不明です。この点について、何か調べる方法はないでしょうか。

 どこから借入をしていたかが全くわからない場合には、信用情報の開示請求をしてみましょう。開示を受けることによってどこから借入をしたかがわかります。次の3社すべてに対して開示請求をすれば、おおよその借入先を網羅することができます。

・全国銀行個人信用情報センター
・株式会社日本信用情報機構
・株式会社シー・アイ・シー

 借入先がわかれば、借入残高の証明書を求めたり、消費者金融など法定金利を超える利息での取引が疑われるようであれば、取引履歴を求めます。このようにして借入の総額を調査することができます。

 また、相続放棄の手続をしているか否かは、家庭裁判所へ照会をかけることによって調査することができます。

5年前に父が他界した時には、実家で暮らしているのが母一人であったため、母名義で相続登記をしました。2年前に母も他界しましたが、実家に住む人もいないためとりあえず兄弟3人で法定相続分どおりに相続登記をしておきました。ところが、今年になって一番下の弟が勤めていた会社を辞め、実家に入って起業することになりました。兄弟としても弟の門出を応援してあげたいのですが、実家の名義はどのようにすればよいのでしょうか

5年前に父が他界した時には、実家で暮らしているのが母一人であったため、母名義で相続登記をしました。2年前に母も他界しましたが、実家に住む人もいないためとりあえず兄弟3人で法定相続分どおりに相続登記をしておきました。ところが、今年になって一番下の弟が勤めていた会社を辞め、実家に入って起業することになりました。兄弟としても弟の門出を応援してあげたいのですが、実家の名義はどのようにすればよいのでしょうか

 まず確認したいのは、「母」が亡くなられた際の法定相続分どおりの相続登記を申請する際に、ご兄弟で遺産分割協議をしたかどうかという点です。これによって少し手続きが変わります。

 

 ア)遺産分割協議をしていない場合

 法定相続分(このケースでは各3分の1)による相続登記は、法律が定めた割合どおりに登記しているだけですので、遺産分割協議を経ていなくても登記することができます。遺産分割協議を経ていないので、ご実家の土地建物がどなたの所有物になったのかは、まだ確定していないわけです。つまり、現状の登記記録は「相続人がABCの3人でその法定相続分は各3分の1」という情報だけを公示しているにすぎず、「ABCが各3分の1ずつ所有権を取得したことが確定した」わけではないのです。

 弟さん(Cとします)が実家を継ぐことになったとのことですから、兄弟3人(ABCとします)で「Cが単独で相続する」という遺産分割協議をすることにより、ご実家の土地建物はCが確定的に所有権を取得することになるわけです。

 なお、この場合の登記手続きは、「遺産分割」を原因としてABの持分をCに移転する登記を申請すればよいですし、これに伴う課税の心配もありません。

 

イ)遺産分割協議をしている場合

 同じく持分各3分の1で相続登記をしている場合でも、ABCで既に遺産分割協議をし、その結果「ABCが各3分の1ずつ実家の土地建物の所有権を取得する」と確定しているケースも考えられます。

 この場合、「一旦まとまった遺産分割協議をやり直してC単独名義で相続し直す」という作業が必要になります。このような遺産分割協議のやり直しは、裁判例でも相続人全員の合意があれば有効と考えられています。

 このケースでは、登記手続きと課税面で影響があります。

 アと異なり、C単独の登記名義とするためには、ABC3名のための相続登記を「遺産分割協議の合意解除」を原因として一旦抹消し「母」名義に戻します。そのうえで改めてC単独の相続登記を申請することになりますのでご注意ください。

 また、実体上は遺産分割協議のやり直しであっても、税務上はABからCへの贈与とみなされますので、Cに贈与税が課税される点にも十分にご注意ください。

父が亡くなり葬儀も終わりました。しかし、父には多額の借金があるため相続放棄することを考えています。父名義の土地建物があるのですが、相続人全員が相続放棄した場合、この土地建物はどうなるのでしょうか。

父が亡くなり葬儀も終わりました。しかし、父には多額の借金があるため相続放棄することを考えています。父名義の土地建物があるのですが、相続人全員が相続放棄した場合、この土地建物はどうなるのでしょうか。

 相続の放棄等により相続人が不在となった場合、相続財産は清算がおこなわれ、プラスの財産が残った場合、最終的には国庫に帰属します。

 清算事務は、相続財産管理人が行います。相続財産管理人は、家庭裁判所が利害関係人又は検察官の申立によって選任されます。相続財産管理人をして相続財産を管理・清算・消滅させるとともに、出現する可能性のある相続人を捜索し、最終的には国庫に帰属するものとなります。

 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます。そうすると、亡くなった方の子の全員が相続の放棄をした場合、亡くなった方のご両親等が相続人になります。ご両親等が既にいないまたは全員が相続の放棄をした場合、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹がいないまたは全員が相続の放棄をした場合に相続人が不在となります。

 このように先順位の相続人が相続の放棄をすると、相続権が順次移っていきます。そもそも相続の放棄はマイナスの財産を相続しないようにする場合がほとんどでしょうから、ご相談者が相続の放棄をすることで祖父母や叔父叔母に影響があることを知っておきましょう。

遺産分割はどのように行ったらいいのでしょうか

遺産分割はどのように行ったらいいのでしょうか

 「遺産分割」とは、相続人が複数いる場合に、その相続財産は最終的に共同相続人の誰が取得するのかを確定させることをいいます。そして、遺産分割の方法は、大きく分けて次の3つの方法があります。

1 指定分割
  遺言により分割方法の指定があった場合にそれに従って分割する方法。

2 協議分割
  共同相続人の間で協議により遺産分割を決定すること。

3 調停分割・審判分割
  遺言もなく、協議によっても分割の合意ができないときに、家庭裁判所の調停・審判手続きにより分割を行うこと。

 具体的な遺産分割のやり方ですが、実際に遺産分割によって相続財産を分ける場合は、下記のような方法で行なうことになります。

1 現物分割
  個々の財産の形や性質を変えることなく分割する方法です。遺産分割では、まず現物分割できないかを検討します。

2 代償分割
  一部の相続人に法定相続分を超える額の財産(たとえば、不動産)を取得させる代わりに、他の相続人に対する債務(たとえば、代償金支払債務)を負担させる方法です。審判では、代償分割が認められる「特別の事由」がある場合に、代償分割をすることになります。この「特別な事由」とは、たとえば、現物分割ができない場合や、不適当な場合をいいます。また、代償分割は、一部の相続人が他の相続人に対して債務(代償金支払債務)を負うことになるので、その債務を負うことになる相続人に金銭の支払能力がある(つまり、支払えるお金がある)場合でなければ審判できないとされています。

3 換価分割
  相続財産を売却して現金化し、その現金を相続人に分配する方法です。

ご近所の方が亡くなりましたが、その方は身寄りがいません。この場合、お墓をはじめ、祭祀財産はどうなるのでしょうか

ご近所の方が亡くなりましたが、その方は身寄りがいません。この場合、お墓をはじめ、祭祀財産はどうなるのでしょうか

 亡くなった方(被相続人)が祭祀財産(お墓など)の承継者を指定していた場合には、その方が祭祀財産を承継します。被相続人の親族であることも氏を同じくすることも必要ではありません。

 被相続人が祭祀財産の承継者を指定せず、かつ、身寄りがなく祭祀財産の承継者が不明の場合には、一般の相続財産の場合と同様、民法951条以下の相続人不存在の規定に基づいて処理されることになります。したがって、これらの手続きの終了によって祭祀財産は最終的には国庫に帰属することになります。