2019年静岡県司法書士会第1回会員研修会予告 「相続実務必携」さらにパワーアップ!

静岡県司法書士会会員限定のお知らせです!

 あかし運営委員会が「相続実務必携」を出版してからわずか3か月ですが、相続法改正により、さらに新しい情報、深い考察を提供できるものと確信しています。「相続登記の専門家」から「相続の専門家」に脱皮するビッグチャンス到来です。

7月27日の研修会、お待ちしています。

令和元年7月27日(土)午後1時00分~午後4時40分
受 付 午後0時30分
講師 古橋 清二氏(静岡県司法書士会)
  中里 功氏(静岡県司法書士会)
  神谷 忠勝氏(静岡県司法書士会)
  内納 隆治氏(静岡県司法書士会)

亡父が、亡くなる20年前に弟に結婚資金として500万円を贈与しています。この500万円は、遺留分を算定する際に考慮できますか?

 相続人に対する贈与の場合、贈与財産に含まれる価額は、相続開始前10年間の婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与とされました(改正民法1044条2項)。かつての判例では、相続人が過去に受けた特別受益はすべて遺留分算定のための財産の価額に含むとされていましたが(最判平10・3・24判例時報1638号82頁)、改正法により10年間の制限が設けられました。

 したがって、すでに贈与から20年間が経過している今般の贈与は、原則として遺留分算定のための財産の価額に含まれないことになります。もっとも、相続人に対する贈与の場合も、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与は、1年間に限定されません。

 また、特別受益に該当しないような贈与の場合は、相続開始前1年間の贈与であっても遺留分算定のための財産の価額に含まれないことになりますが、この場合も当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与は、10年間に限定されず遺留分算定のための財産の価額に含まれる点にご注意ください。

特別寄与料の請求はいつまでにしなければならないといった期間の制限はありますか。

 特別寄与料の請求は、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができなくなります。

 このように権利行使期間が短期間に制限されているのは、相続をめぐる紛争の複雑化や長期化を防止するためであると言われています。

自筆証書遺言の誤記を訂正したいのですが、簡易な方法で訂正するにはどうすればいいですか

 自筆証書遺言中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ効力を生じません。しかし、自筆証書中の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については、遺言者の意思を確認するについて支障がないものであるから、遺言の効力に影響を及ぼすものではないと解するのが相当であるとされます(最高裁昭和47317日 民集262249頁)。

 また、遺言者が書損じた文字を抹消したうえ、これと同一又は同じ趣旨の文字を改めて記載したものであることが証書の記載自体からみて明らかな場合には、当該自筆証書遺言が無効となるものではありません(最高裁昭和561218日 民集第3591337頁)。

 もっとも、これらの判例は単なる誤記の訂正という前提における判断であるので、簡易な方法で訂正することをお薦めするわけではありません。

亡父が、亡くなる3年前に内縁の女性に1000万円を贈与していた事実が判明しました。この1000万円は、遺留分を算定する際に考慮できますか?

遺留分を算定するための財産の価額は、次の計算式で算出されます(改正民法1043条1項)。

 ① 被相続人が相続開始時に有した財産の価額 +

 ② 被相続人の贈与財産の価額 -

 ③ 被相続人の債務の全額

 ②の贈与財産に含まれる価額ですが、ご質問のように相続権のない方への贈与の場合は、相続開始前1年間の贈与に限りその価額が算入されます。以上の点は、改正の前後を通じて実質的な変更はありません。したがってすでに贈与から3年が経過している今般の贈与は、原則として遺留分算定のための財産の価額に含まれないことになります(改正民法1044条1項前段)。

 もっとも、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与は、1年間に限定されない点も改正の前後を通じて変更がありません(同項後段)。贈与の相手が内縁の女性でとのことですので、後段の規定が適用される可能性は高いものと考えられます。

亡Aの相続について遺産分割協議が整いましたが、その後、各相続人に対し、特別寄与者と称する方から特別寄与料の請求がきました。この場合、既に成立した遺産分割は影響を受けるのでしょうか。

遺産分割の成立後に特別寄与料の請求があったとしても、既に成立した遺産分割に影響が及ぶことはありません。

特別寄与料はどのように請求すればいいのですか。

特別寄与料の請求は、各相続人に対して個別に行う必要があると考えられます。これは、特別寄与料は、各相続人がその相続分に応じて責任を負担するものであるためです。

また、各相続人との間で協議が整わないときや、協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対し、協議に変わる処分を請求することができます。この場合、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。

 なお、特別寄与料の請求権は、協議、調停または審判によってはじめて形成されるものと考えられています。したがって、協議等によって特別寄与者に具体的な権利が発生していない場合には、特別の寄与の有無の確認請求や相続人の特別寄与者に対する債務不存在の確認請求訴訟等はできないものと考えられます。

子供の進学費用として300万円ほどのまとまった資金を準備をしなければなりませんが、昨年大病を患った影響で収入が激減し、日々の生活で目いっぱいの状態です。2年前に亡くなった父の遺産を当てにしていたのですが、相続人間の遺産分割協議が難航しており、未だに話し合いがまとまる目途は立ちません。   何かよい方法はありませんか?

 必要な資金が300万円とのことですと、改正民法909条の2に規定された預貯金の仮払い制度では仮払いを受けられる上限が150万円のため不足が生じることになりますね。このような場合、家庭裁判所に対し遺産分割調停の申立てをし、あわせて預貯金仮払いの保全処分を申し立てる方法を検討しましょう(改正家事事件手続法200条3項)。

 この申立てが認められるためには、相続人の生活費の支弁や相続債務の弁済のために必要であることを疎明しなければなりません。また、他の相続人の利益を害さないことも要件とされていますので、ご注意ください。

 なお、改正民法909条の2の仮払い制度と異なり、遺産の一部分割とみなされる規定はありません。したがって、本案である遺産分割調停や審判では、保全処分によって仮払いを受けた預貯金分も含めた遺産分割が行われる点にもご注意ください。

自筆証書遺言を加除・訂正したいのですが、遺言書作成時に押捺した印鑑を紛失してしまいました。加除・訂正は違う印鑑でもいいですか

 自筆証書遺言中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ効力を生じませんが、捺印する印鑑は当初の遺言書作成時に使用した印鑑を使用しなければならないという規定はありません。

私はAの相続人ではありませんが親族であり、Aの生前にAの療養看護に尽くし、Aの財産維持に特別の寄与をしたと思っています。Aは、私に対し100万円を遺贈するという遺言を残してくれましたが、とてもそれでは足らないと思っています。私は、相続人に対し、特別寄与料の請求をすることができるでしょうか

特別寄与者が、その寄与について被相続人から対価を得ていたときは、特別寄与者による特別寄与料の請求は認められません。これは、被相続人に対する貢献に報いるために、契約で特別寄与者に利益を与えられていたり、契約や遺言で対応がされていた場合も同様です。

 被相続人が、生前、貢献に報いたいと考えていた場合には、一次的には被相続人において契約や遺言などにより利益を与えるという対応が期待されます。そのような趣旨で契約や遺言で利益を与えるという対応がなされていた場合には、当該契約等により特別寄与者がその寄与について対価を得たものと考えられます。したがって、このような場合には、特別寄与料の請求は認めらないと考えられます。