金融機関向相続FAQ

金融機関向FAQです。困ったときに頼りになればさいわいです。

突然相続関係のお客さんが窓口に来て対応に迷ったことはありませんか? どんな戸籍が必要なの? 法定相続情報証明って何? 成年後見人ってどんな権限があるの? 日々の業務で迷ったとき、きっとお役に立ちます。
※本ページの情報は随時更新しています。したがって、後日、現在掲示している説明を修正して異なる見解を公示する可能性があることをご了解ください。

法定相続情報証明制度について

  • 法定相続情報証明制度を説明したところ、早速戸籍の準備をしたいと言われました。どこで取得するのでしょうか。また、どこまでの範囲の戸籍を揃えることが必要なのでしょうか

     戸籍謄本は、本籍地のある市町村役場の窓口で交付を受けることができます。本籍地が遠方の場合は、郵送で交付請求ができます。具体的な送付先や必要書類については各市町村役場のホームページ等をご確認頂くのがよいでしょう。

     また、揃える戸籍の範囲は、原則、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本及び相続人の戸籍謄本又は戸籍抄本です。

     さらに、相続人が兄弟姉妹の場合は、被相続人の兄弟姉妹を確認するために、被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本も揃えます。

     代襲相続(例えば、被相続人の子供が被相続人よりも先に亡くなっていて、孫が相続人となる場合)では、被代襲者(前述の例では被相続人の子供)の出生から死亡までの戸籍謄本も揃えます。

     複雑なケースについては司法書士等の専門家をご活用ください。

    (文責 監物宏昌)

  • 法定相続情報証明制度は面倒だと言われました。従来通り、戸籍等の確認による対応でもよろしいのでしょうか

     はい。戸籍等の確認による対応で構いません。

     法定相続情報証明制度は、あくまで戸籍の束に代わるものにすぎません。従来の確認方法ができなくなるわけではないのです。

     法定相続情報証明制度を利用すれば戸籍に記載された相続人を簡単に確認することができますが、お客様の方では法定相続情報一覧図の作成や、法務局での申し出を負担に感じることもあるでしょう。

     金融機関としては、お客様に制度の利便性を説明しつつも、強制することができるわけではないので、ケースに応じて柔軟に対応する必要があるでしょう。

    (文責 井口ゆり)

  • 法定相続情報証明制度を利用した方が良い場合とそうでない場合はどのように考えればよろしいのでしょうか

     被相続人の財産が貴行庫の預貯金のほか、他の金融機関の預貯金、不動産、株式など複数ある場合は、法定相続情報証明制度を利用することにより、各窓口で大量の戸籍を謄写したり読み解いたりする手間を省けますので、手続きの時間を短縮することができます。

      ただし、相続関係を確認するために必要となる戸籍(除籍)の数が数通で済む場合や、被相続人の財産が預貯金口座1つしかなく、複数の金融機関や行政機関に戸籍(除籍)を提出する必要がない場合は、却って法定相続情報証明を取得するほうが煩雑となる場合があります。お客様の手間を考えて助言いただければ幸いです。

    (文責 井上尚人)

  • 外国籍の相続人がいる場合、法定相続情報証明制度を利用するには、戸籍以外に何を集めればよろしいでしょうか

     残念ながら相続人が日本国籍を有しないなど、戸籍(除籍)謄本、抄本を添付することが出来ない場合は、法定相続情報証明制度を利用することはできません。

    (文責 川端満秋)

  • 相続人の中に相続放棄をした者がいる場合、認証文付き法定相続情報一覧図の写しにはその旨の記載もされるのでしょうか

     法定相続情報一覧図には、相続放棄や遺産分割協議の結果は記載されません。

     法定相続情報一覧図は、戸籍の束に代わり得るものとして、戸籍から判明する法定相続人の範囲を証明するのみであり、戸籍以外の情報は反映されないため、相続放棄をした者も、他の相続人と同様に「子」「配偶者」等と記載されます。

     したがって、相続放棄があった場合は、認証文付き法定相続情報一覧図に加えて、相続放棄申述受理書の提供を受け、相続人の範囲を特定することになります。

    (文責 倉田和宏)

  • 法定相続情報一覧図の写しには有効期限はあるのでしょうか

     有効期限はありません。

     法定相続情報一覧図の写しは、戸籍等の記載からわかる、被相続人の死亡時点における同順位の相続人を表しているものです。したがって、変更等があれば別ですが原則として記載内容が今後変わることはありませんので、一度交付された法定相続情報一覧図の写しに有効期限は設けられていません。

     ただし、法定相続情報一覧図の写しの提供を受ける側で独自に有効期限を定める場合がありますので、貴行庫での取扱いと、その他の手続きとを区別してご案内されるとよいでしょう。

     なお、法務局においての法定相続情報一覧図の保存期間は作成の年の翌年から5年間ですので、法定相続情報一覧図の写しの再交付を受ける場合は期限がありますのでご注意ください。

    (文責 酒井俊季)

  • 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出には所定の様式があるのでしょうか

     法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出は、「第1号様式」の申出書を使用します。もっとも、必ずこの書式を使用しなければいけないというわけではなく、同じ内容が書かれた申出書でも足ります(なお、「第1号様式」の申出書は、下記からダウンロードできます)。

     保管及び交付の申出の際は、申出書のほかに、法定相続情報一覧図、被相続人の出生時からの戸籍(除籍)謄本一式、被相続人の最後の住所を証明する書面、相続人の戸籍謄本(抄本)、申出人の住所を証明する書面、委任状(代理人によってする場合)等が必要となります。

    (文責 佐藤麻妃)

  • 数次相続が発生している場合でも法定相続情報一覧図は1枚にまとまっているのでしょうか

     いいえ、数次相続を1枚の用紙にまとめることはできません。

     法定相続情報一覧図は、被相続人1人につき1枚ずつ作成されます。法定相続情報一覧図は被相続人が亡くなった時点(=相続開始時)での相続人の氏名等を記載することとされているためです。いわゆる数次相続(被相続人が亡くなった後に相続人の方が亡くなった等)が発生している場合、その後に死亡した相続人を被相続人として別途法定相続情報一覧図を作成する必要があります。

    (文責 佐野貴盛)

 

相続に伴う預貯金の取扱いについて

  • 認証文付き法定相続情報一覧図の写しがあれば遺産分割協議書はなくても、預金の払い戻しに応じてよろしいのでしょうか

     いいえ、法定相続情報一覧図の写しだけでは払い戻しに応じられません。

     従来、相続人が被相続人の預金口座を解約する場合、金融機関は、法定相続人の範囲を確認するため、相続人に対して、少なくとも以下の書類の提出を求めたことと思います。

    ・被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本、全部事項証明書

    ・法定相続人の戸籍謄本(抄本)、全部事項(個人事項)証明書

     認証文付き「法定相続情報一覧図の写し」は、法定相続人の氏名、生年月日、続柄等を公的に証明する書類であって、上記の戸籍の束に代わるものです。この書類により法定相続人の範囲を容易に確認することができます。

     しかし、認証文付き「法定相続情報一覧図の写し」は、遺産分割協議書に代わるものではないため、貴行庫所定の相続手続依頼書(相続届)に加えて、別途、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書等、遺産分割に関する書類が必要となります。

     認証文付き「法定相続情報一覧図の写し」について、法務省ホームページの記載例を引用しますので、ご参照ください。

    (文責 柴田泰光)

  • 相続人のうちの一人から、「父の葬儀の準備をしていたら、思ったよりもお金がかかることが分かったので、先に葬儀費用を出金したい」と言われましたが、これに応じてよろしいのでしょうか

     遺産分割協議が確定するまでは、金融機関の預貯金は相続人全員の合意が確認できなければ払い戻すことはできないのが原則です。

     一方で相続人の中に行方不明者や認知症の方がいるなど、相続人全員の速やかな合意形成が困難な場合があります。

     こうした現状を踏まえ、緊急性の高い葬儀費用等の支払いのための払い戻しに関しては一定の要件の下で便宜扱いを定めている金融機関も多いと思われますので、貴行庫の取扱いを確認してみましょう。

     なお、預貯金については平成16年の最高裁判例等で、「原則として預貯金は被相続人の死亡により相続人らに当然に分割されて、遺産分割の対象とはならない」とされていました。しかし、最高裁大法廷は平成28年12月19日、それらの判例を変更して「預貯金も遺産分割の対象となる」と判断しました。この判例の変更に伴い貴行庫の取扱いも変更されている可能性もありますので、注意しましょう。

    (文責 島武志)

  • 遺産分割協議がまとまっていなくても、法定相続分の払戻しに応じるべきでしょうか

    1 かつての考え方

     預貯金債権について、かつては「当然に法定相続分に応じて分割相続されるものであるから遺産分割の対象とはならない。このため、各相続人は自身の法定相続分に相当する金額の払戻し請求が可能」という裁判例があり(最高裁平成16年4月20日判決ほか)、金融実務においても、この考え方にしたがって払戻しに応じていました。

    2 判例変更

     ところが、平成28年に重要な判例変更がありました。

     最高裁は、預貯金債権について「相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となると解するのが相当」と結論付け、従来の考え方とは逆の考え方を採用したのです(最高裁平成28年12月19日決定)。

     この際に判断の対象となったのは、銀行や信用金庫等に対する「普通預金」のほか、ゆうちょ銀行等に対する「通常貯金」「定期貯金」だけでしたが、その後「定期預金」や「定期積金」についても同様の判断をする裁判例が現れています(最高裁平成29年4月6日判決)。

    3 遺産分割協議書の提示を求めるべき

     このように、預貯金債権は当然に相続分に応じて分割されないことになりましたので、遺産分割協議成立の前に法定相続分のみの払戻し請求を受けた金融機関としてはこれに応じるべきではなく、法務局発行の法定相続情報証明、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書の提示を求めた上で、預貯金債権が相続人のうちのどなたに帰属したのかを確認したうえで、払戻しに応じるべきです。

    (文責 中里功)

  • お客様から、「亡父の遺産を把握したいので、預金残高を教えて欲しい」と依頼された場合、他の相続人に確認をとる必要があるのでしょうか。また、貸金庫の中身を確認したいと依頼された場合はどうしたらよろしいでしょうか

     預金についての情報は当然個人情報ですが、個人情報は「生存する個人に関する情報」とされていますので被相続人の死亡により個人情報ではなくなる、と考えられる一方、相続によって被相続人の個人情報にかかる権利義務は相続人に承継されているとも考えられます。

     この点について平成21年1月22日の最高裁判決で「共同相続人に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預貯金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる。」と判示されました。

     よって、お客様から依頼があった場合、他の相続人の確認を取ることなく残高証明書の発行等の対応をすることとなりますが、適正な請求者であるか確認を取る必要がありますので、戸籍謄本一式や法定相続情報一覧図の写し、利害関係を証する書類、委任状(代理人からの請求の場合)等を用意していただき、指定の発行依頼書に署名捺印していただくことになる旨説明してください。

    (貸金庫について)

     被相続人の死亡により相続人は貸金庫契約上の地位を相続しているので、準共有者の保存行為として単独で貸金庫の中身を確認することができます。

     しかし、貸金庫の中身を確認するためと言っても、行員が立ち会って本当にそれだけか(持ち出されていないか)の確認を取ることはできません。相続人間のトラブルに巻き込まれないためにも金融機関としてはむやみに開扉に応じるべきではありません。

     ですので、①戸籍等一式あるいは法定相続情報一覧図で相続人を確認し、②その相続人全員に開扉依頼書に署名捺印をしてもらうか、委任状を提出してもらい、開扉が相続人の総意であることを確認した上で行う必要があります。

     中身の確認のみのために相続人の一人が開扉する場合に、開扉時に申出人が持ち出していないこと、あるいは○○を持ち出したことを証明する必要がある時は公証人に立会を求め、金融機関がトラブルに巻き込まれないよう努めてください。

    (文責 仁科正人)

  • 自筆証書遺言を持参され、預金口座解約を依頼されましたが、このまま応じても良いのでしょうか。遺言公正証書であれば公証人が携わるので安心できますが、自筆証書遺言の場合はどのような確認をすればよろしいのでしょうか

     自筆証書遺言(遺言者が自筆で書いた遺言書)を持参された場合には(1)裁判所の検認手続が済んでいるか(2)遺言書の形式が定められた方式に従っているか(3)遺言執行者が定められているか等を確認する必要がありますので、各論点に分けて以下に説明します。

    (1) 裁判所の検認手続

      自筆証書遺言の場合には、公正証書遺言とは異なり裁判所での検認手続を受ける必要がありますので、もし検認手続が終わっていない遺言書を持参された場合には、まずは検認手続を行うよう促してください。検認手続が済んだ遺言書を持参された場合でも、検認手続は遺言書の効力を判定するものではありませんので、検認の審問結果を確認のうえ、他の相続人から異議が出ていなければ良いですが、もし異議がうかがわれるような内容でしたら慎重に進める必要がありますので、貴行庫の法務担当者あるいは専門家に相談してください。

    (2) 遺言書は、定められた方式に従っていなければならず、これに反する遺言書は無効となります。自筆証書遺言の場合は、①全て自筆で記載されているか②日付が記載されているか③署名押印がされているかを確認してください。また、加除修正がある場合、④訂正箇所に印を押したうえ、欄外に訂正箇所を指示して訂正した旨を付記し署名がされているか確認してください。①②③の方式違背がある遺言書は無効となりますし、④の方式違背の場合には、訂正の内容や程度によって、有効、訂正のみが無効、全体として無効となることがあり得ますので注意が必要です。いずれにしても、こうした方式違背があるときは、慎重に進める必要がありますので、貴行庫の法務担当者あるいは専門家に相談してください。

    (3) 公正証書遺言であれば遺言執行者を定めるのが一般的ですが、自筆証書遺言の場合には定められていないことも多いでしょう。遺言執行者が定められていない場合、遺言の内容が「相続人の誰にどの財産を相続させるか(いわゆる遺産分割方法の指定)」という内容であれば、当該相続人からの申出に応じて良いでしょうが、「第三者に対して遺贈する」といった内容の場合には、相続人全員の関与が必要になります。

      一方、「第三者に対して遺贈する」内容の遺言であっても、遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が単独で手続を行うことができます。また、遺言書で指定されていなくても、家庭裁判所に申し立てて遺言執行者を選任してもらうことも可能です。

    (文責 花田眞吾)

  • 相続人のうちの一人が預金の払戻し依頼に来ました。遺産分割協議書等が必要になる旨を伝えたところ、施設に入っている高齢の相続人がおり、最近は家族のことも忘れるようになっているようです。どのように対応すればよろしいでしょうか

     高齢で施設に入所されている方は、家族のことを忘れるようですが、他のことはどうでしょうか。例えば、自分の名前や生年月日を言えるか、自分が今どこにいるのか、最近のことは覚えているのかあるいは、昔のことはどうなのか。または自分の財産のことはどうなのか。等々を勘案して、判断能力が低下していると思われれば、成年後見制度を利用して、成年後見人等を選任してもらうことがいいでしょう。

      成年後見制度では、本人の判断能力の状態によって、後見、保佐、補助の3類型が用意されています。いずれも家庭裁判所に申立てを行い、成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)が選任され、登記されます。成年後見人等の権限を証明する書面として登記事項証明書が発行されます。

     この成年後見人等が本人の法定代理人として遺産分割協議に参加します。なお、保佐人及び補助人については、遺産分割に関する代理権が付与されている場合に代理人として遺産分割協議に参加できます。登記事項証明書で遺産分割に関する権限を確認して下さい。

     成年後見制度は、本人保護の考え方に立脚しています。したがって遺産分割協議で最低でも本人の法定相続分を確保することが求められます。本人の取得する財産が法定相続分に満たないと思われる場合は家庭裁判所への相談を促すなど慎重に対応した方がよろしいかと思います。

    (文責 伴信彦)

  • 預金の払戻しに来られたお客様が、認証文付き法定相続情報一覧図の写しと遺産分割協議書を持参されましたが、相続人の中に未成年者がいます。手続きが変わる点があるのでしょうか

     未成年者に代わって法律行為を行う者は親権者となりますが、親権者と未成年者が共に相続人である場合、親権者も遺産分割の当事者であるため、親権者は未成年者の代わりに遺産分割協議をすることができません。

     このケースを利益相反とよび、未成年者の権利保護の観点から、親権者に代わる特別代理人を選任する必要があります。特別代理人は家庭裁判所に申立て、選任してもらいます。この特別代理人が未成年者に代わり遺産分割協議に参加しますので、遺産分割協議書の押印も特別代理人が行い印鑑証明書についても特別代理人のものが必要となり ます。預金の払戻し手続きをするには、特別代理人選任審判書を特別代理人の資格を証する書面として確認をしておくことが必要です。

    (文責 山本剛史)

  • 預金の払戻しに来られたお客様が、認証文付き法定相続情報一覧図の写しと遺産分割協議書を持参されましたが、相続人の中に成年被後見人がいます。手続きが変わる点があるのでしょうか

     相続人の中に成年被後見人がいる場合、成年被後見人に代わって成年後見人が遺産分割協議に参加します。印鑑証明書については成年後見人のものが必要となり、その資格を証明するものとして、後見に関する登記事項証明書を確認する必要があります。

     なお、成年被後見人と成年後見人が共に相続人である場合、成年後見人は成年被後見人の代わりに遺産分割協議をすることができません。このケースで成年後見監督人がいる場合は、成年後見監督人が成年被後見人に代わり遺産分割協議に参加します。成年後見監督人の有無については後見に関する登記事項証明書で確認することができます。

     成年後見監督人がいない場合は、特別代理人を選任する必要があります。特別代理人は家庭裁判所に申立て、選任してもらいます。この特別代理人が成年被後見人に代わり遺産分割協議に参加します。特別代理人の資格を証する書面として特別代理人選任審判書を確認をしておくことが必要です。

    (文責 山本剛史)

  • 被保佐人である相続人の保佐人から遺産分割協議書の提示を受け、預金の払戻しの依頼を受けましたが、何を確認すればよろしいのでしょうか

     保佐人が遺産分割に関する手続について代理権を与えられているかどうかを後見登記事項証明書で確認して下さい。

     相続人中に認知症等で判断能力が低下している人がいる場合、その人を除いて遺産分割協議を行うことができないため、遺産分割協議の前に、家庭裁判所へ成年後見等開始の審判を申し立て、成年後見人等を選任してもらう必要があります。

     成年後見制度には、後見、保佐、補助の3つの類型がありますが、当然に本人を代理できる成年後見人に対し、保佐人、補助人は、家庭裁判所から許された範囲でしか代理権を持っていません。

     保佐人が、被保佐人に代わり署名捺印した遺産分割協議書を提示して、相続預金の払戻し手続きに訪れた場合は、その保佐人に遺産分割に関する手続きについて代理権が与えられているかどうかを確認する必要がありますので、代理権の有無を確認する資料として、後見登記事項証明書を提出していただくようにします。

     なお、保佐人に遺産分割に関する代理権が付与されていない場合、遺産分割協議は被保佐人自身が行い、保佐人がこれに同意する必要があります。保佐人の同意の有無については、例えば遺産分割協議書に保佐人が同意する旨の文言と署名捺印があるかなど、書面で確認するようにし、保佐人が記載された後見登記事項証明書と保佐人の印鑑証明書を提出していただくようにします。

    (文責 監物宏昌)

  • 10年以上同居しており、事実婚状態であった旦那様が亡くなり、奥様が預金の払い戻しに来店されました。旦那様には兄弟がいるようですが、疎遠であり連絡先もわかりません。急ぎでお金が必要のようですが、奥様からの手続のみで払戻しに応じてもよろしいでしょうか

     民法では、事実婚状態であった奥様に相続権を認めていません。10年以上という期間も関係ありません。事実婚状態であった旦那様に子がなく、両親もすでに亡くなっていて、兄弟がいる場合、疎遠であったとしても兄弟が相続人となります。ですから、事実婚状態であった奥様からの払い戻しに応じることはできません。

     なお、遺言の記載内容によっては、事実婚状態の奥様が預金を受け継ぐことができる場合がありますので、遺言の有無についての確認は必要です。

    (文責 井口ゆり)

 

こんな人が窓口に来たら

  • 遺言執行者が来店して、被相続人の預金口座の解約を申しでてこられました。確認すべきポイントはどこでしょうか

    1 除籍謄本(抄本)により遺言者が死亡していることを確認しましょう。

    2 公正証書遺言以外の形式で作成された遺言である場合は、まず家庭裁判所で検認を受ける必要があります。遺言に検認済の認証文が合綴されていない場合は、まず家庭裁判所で検認を受けるように助言してください。

     遺言執行者が、検認の手続きをよくご存じない場合は、司法書士に検認の申立書の作成を依頼することもできます。

    3 自筆証書遺言の場合、全文、日付、氏名が自筆で書かれているか、遺言者の押印があるかを確認します。訂正箇所がある場合は訂正箇所の指示と訂正した旨の記載及び署名、訂正箇所への押印があるかを確認します。これらに不備がある場合は遺言が無効となる場合がありますので、慎重に対応しましょう。

    4 遺言執行者について、遺言で指定されている場合は遺言書の記載を確認します。遺言に指定がなく家庭裁判所で選任されている場合は遺言執行者選任審判書を確認します。遺言執行者の本人確認も必要です。

    (文責 井上尚人)

  • 窓口に来られた方から預金者である義父が亡くなったと相談を受けました。相談者のご主人は先に亡くなっており、お子さんもいらっしゃらないようです。義父の親族は他にいないようです。預金の払い戻しを依頼されていますが、どのように対応したらよろしいでしょうか

     残念ながら相談者は義父の相続人でないため、義父の預金を受け取ることが出来ません。義父の相続人は、義父の配偶者とその子あるいは孫等の直系卑属。直系卑属がいない場合は、父母等の直系尊属。直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹あるいは甥姪となります。義父には親族は他にいないとのことなので、相続人不存在にあたり、預金を引き継ぐ者がいない状態です。

     相談者が義父と生計を同じくしていた、療養看護に努めていた、その他特別の縁故があった者である場合に、相続財産を取得できる可能性があります。そのためには、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらう必要があるので、そのことを説明されるとよいと思います。

    (文責 川端満秋)

  • 相続人のうちの一人が預金の払戻し依頼に来ました。遺産分割協議書等が必要になる旨を伝えましたが、長期間行方不明で連絡がとれない相続人がいて、協議ができないとのことです。どのように対応したらよろしいでしょうか

     まず、戸籍や住民票をたどることで現在の住所が判明することもあり、その場合は手紙などで連絡を取ります。

     次に、住民票上の住所に居住していないなど、上記の方法でも居所が判明しない場合は、家庭裁判所に対して、不在者財産管理人選任の申立てを行います。選任された不在者財産管理人が、家庭裁判所の許可を得たうえで、行方不明者に代わって遺産分割協議に参加することで、遺産分割を成立させることが可能となります。

     なお、不在者財産管理人として選任されるためには特に資格を必要としません。相続財産に利害関係を持たない親族等を候補者として申し立て、そのまま選任される場合と、適当な候補者がいないため、弁護士・司法書士等の専門職が選任される場合があります。    

    (文責 倉田和宏)

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